午前中の小学生タイムは、基本すべて自学。
やる内容も、取り組むペースも、自分で決める。
こちらはそれを静かに見守るだけ。
でもこの時間、見ていてなかなか面白い。
たとえば、こんな場面。
黙々とやっているように見えても、よく見ると手が止まりがち。
なんとなくノートを開いてはいるけど、集中力は長くもたない。
ちょこちょこ水筒を開けて飲んだり、鉛筆を削りに行ったり。
——“だらだらモード”の子は、すぐわかる。
そこへふと声が飛ぶ。
「先生、あと何分?」
……はい、延長決定!
その一言に、逃げ腰の気配がにじんでる。
時計が気になっている時点で、頭はもう“終わりたい”に向かってる。
でも、そんな子が―
思考系のパズル問題や、ちょっとした論理クイズを出した瞬間、
一気に目つきが変わる。
前のめりになって、鉛筆の動きが止まらなくなる。
あの集中力はどこに隠れていたのかと、思わずこっちが見入ってしまうほど。
さっきまでとは別人。
「あと何分?」と口にする子もいれば、
だらだらしていた子が突然スイッチを入れて集中することもある。
午前の教室には、いろんなタイプの子がいて、
いろんな“今”が同時に進行している。
このバラバラな感じが、実に面白い。
同じ空間で、まったく違うリズムが交錯している。
でも、それが“自学”という時間の豊かさでもある。
誰かがサボっているように見えて、
実はその子なりのエンジンが、ゆっくり回り始めていたりする。
逆に最初から全開だった子が、すっと手を止める瞬間もある。
一人ひとりが、自分のペースで、自分と向き合っている。
そのリズムを、無理にそろえる必要はない。
だからこそ、思いもよらぬ集中の瞬間が生まれる。
午前中の教室は、静かで不思議な、でもたまらなくおもしろい空間だ。