大問3は、慶應義塾の創始者である福沢諭吉のエピソードを題材とした適語補充問題です。
塾高の入試において、学内の歴史や理念に関連する題材が出ることは珍しくありませんが、1868年、戊辰戦争の砲声が響く中で経済学の講義を続けたという「独立自尊」を象徴する有名なシーンが描かれています。この大問3は「前後の文脈から、また1文の構造を正確に把握して、必要な品詞と意味を丁寧に導き出す力」が試される、非常にバランスの良い構成になっています。
各問題で問われたポイント
- 挿絵を見つつ周辺情報を見る
挿絵を見ながら読み進めれば、生徒が講義を聞いていたというのは分かるだろう。直後のtoも大きなヒントだ。答えはlistening。直前にisがあるので、そこも気を付ける。 - 絵だけからは分かりづらいが
絵だけでは外にいる3人が何を見て指差しているのかいまいち分かりづらい。が、場面が戊辰戦争中であることは同じ段落から分かる。また、空欄がlook atの目的語であることから、一体何を見ているのだろう、さらには後ろのrisingが分詞であり、上野方面から立ち上っているのは大量の何であるのかを総合的に判断し、「煙」だと予想できる。smokeが正解。不可算名詞ということも分かるはず。 - 基本語法が問われた
空所を含む英文のSVだけ確認すると、「戦闘が始まった」。そして空所の直後に A(the new government forces / 新政府軍)と B(the Shogi-tai soldiers / 彰義隊)という2つの勢力が並んでいる。 「AとBの間で」という関係性を示す単語として、頭文字 b- から始まる between を導き出すのはそう難しくはない。その2つの勢力間で戦闘が開始されたのである。 - 基本中の基本 SVを正確につかめ
この空欄を含む1文はwhen節で始まる。「上野で戦闘が始まったとき」どうなったか? 主語は「芝居小屋、料亭、お店」であり、これらがどうなったかという動詞の部分が空欄になっている。また後ろにandで文が続いており、「市場は暗くなった(第2文型)」であることもヒント。もちろん、お店は「閉まった」のである。よって答えはclosed。 - 文脈と構造を正確につかめ
この空欄を含む一文の骨組み(SV)は、後半の “Fukuzawa (S) stayed (V) ~ and kept (V) ~” 。 空欄が主節より前にあるということは、ここ全体で「副詞句」を形成していることになる。直後の “this situation”(この状況=江戸の突然の混乱)を前置詞の目的語と考えると、構造もすっきりする。あとは、頭文字 d で始まる前置詞を導き出せるかどうかの勝負。答えはこの文章の題名にも含まれるduring。 - 基本表現の確認を
5.と同じ文中にある空欄。直前は keep on ~ing(~し続ける)の形になっている。戦闘中でも「講義を続けた」のだ。そのあとの as ~は、「いつものように」となるのはそう難しくはない。as usualで「いつものように」。 - 文脈重視で
前文までに「江戸中がパニックになり、芝居小屋も店も閉まっていた」という異常事態が描写されている。その中で、慶應義塾だけが授業を続けていたという対比を完成させる必要がある。「慶應は授業を行った【唯一の】学校」だったのである。よって答えはonly。 - 文構造の正確な把握および動詞の語法
“that” 以降の文に注目すると、主語は “Fukuzawa’s passion for academics”(福澤の学問への情熱)。続く動詞 “remained” は、「~のままである」という状態を表す第2文型(SVC)を作る動詞だというのが極めて重要。文法的には、動詞 remained の後ろにくる補語(C)が欠けている状態だ。つまり、ここには「情熱」がどうだったかを説明する「形容詞」が入ることを、構造的に見抜く必要がある。頭文字 s で始まり g で終わる形容詞、かつ「情熱」を説明して「(戦時下でも)情熱は衰えず( )なままだった」という文脈を完成させる単語は、strong しかないだろう。 - 現在完了進行形か受動態か
文の主語は “the story”(その物語/エピソード)。動詞部分は “has been” となっており、後ろには進行形(-ing)か受動態(過去分詞)のどちらかが続く形である。もし現在完了進行形(ing形)にすると「物語が(自ら何かを)継続して行っている」という意味になり、文脈が成立しません。主語が「物語」である以上、「人から人へ語り継がれてきた(=伝えられてきた)」という受動態(過去分詞)でなければならないと論理的に判断する必要ある。「慶應において、この物語は世代から世代へと passed down されてきた」と考えよう。 - サービス問題? でも正確に書ける?
この文は “remind O that SV”(Oに~ということを思い出させる)という第4文型の形。「この絵は、今日の慶應生に『that以下のこと』を常に思い出させる」という構造だ。that節の中に注目すると、“it is important to ~” という形式主語の構文になっている。it は仮の主語であり、後ろの “toc-”(不定詞)の部分が本当の主語(真主語)というわけだ。「大きな困難に直面しても、学問を(何)することが重要か」を考え、頭文字 c で始まり、福澤先生が砲声の中でも貫いた「継続」の精神を表現する単語は continue 。
やはり、ここも10問中8問くらいは正解したかったところ。この問3までが前半戦。問4が後半戦と考えていいだろう。
設問に関係する部分だけでなく、本文中には動名詞の意味上の主語や付帯状況のwith、関係副詞など、重要な文法事項が随所に盛り込まれていました。
それらを単なる知識として処理するのではなく、戊辰戦争という歴史的背景と結びつけながら読み解いていくことで、英文の理解が一段と深まるはずです。
内容・構文ともに非常にバランスがよく、思わず授業で扱いたくなるような魅力的な文章でありました。

